雨が降ると水たまりに?ゲリラ豪雨に強い駐車場をつくる「排水対策」3選

雨が降るたびにできる水たまり。「またか」と思いながらも、そのままにしている方も多いかもしれません。しかし、こうした水たまりは見た目の問題だけでなく、舗装の寿命や安全性、さらにはEV設備の故障リスクにもつながる重要なサインです。


駐車場の排水は、一般的に「表面排水」と「浸透排水」の2つの仕組みを使って行われています。表面排水は、舗装に勾配をつけて水を自然に流し、集水桝や側溝へ導く方法。一方の浸透排水は、地面にしみ込ませて処理する方式です。地域や地盤条件によって、これらを組み合わせて設計されるのが一般的です。


問題が起きやすいのは、表面排水がうまく機能していない場合。勾配のつけ方が不十分だったり、沈下によって低い部分ができると、そこに水がたまりやすくなります。また、落ち葉や土砂で集水桝が詰まり、水が逃げ場を失うケースも多く見られます。


こうした排水トラブルは、施工当初からの設計ミスだけでなく、経年劣化や管理不良によって徐々に悪化することもあります。次のセクションでは、水たまりを放置することでどんな悪影響が生じるのか、具体的に見ていきましょう。




そのまま放置でOK?水たまりが与える3つの悪影響

水たまりは単なる見た目の問題に思われがちですが、実はさまざまなリスクの温床になっています。放置すればするほど、舗装材の劣化だけでなく、安全面やコスト面でも大きなダメージにつながる可能性があります。


まずひとつ目の影響は、舗装そのものの劣化加速です。アスファルトやコンクリートの表層は、本来は乾いた状態を想定して作られています。水が常にたまることで、表面が徐々に侵食されたり、目地から水が浸入して内部の骨材が緩んでいきます。冬季には凍結による膨張・収縮が加わり、ひび割れや陥没が発生しやすくなります。


次に挙げられるのが、転倒やスリップの危険性です。水たまりは利用者の視界を妨げ、滑りやすい状態を生みます。特に高齢者や車椅子利用者にとっては深刻な障害要因になり得ますし、店舗や施設の駐車場であれば、クレームや事故責任が発生する可能性も否定できません。


三つ目は、建物や設備への波及リスクです。駐車場から溢れた雨水が建物の基礎に浸透したり、配電盤や充電器の基礎部分にまで浸水が及ぶと、大規模な修繕が必要になります。電気系統のショート、カビや腐食の発生など、二次的な被害も無視できません。


このように、水たまりの放置は“あとで高くつく”ことがほとんどです。次のセクションでは、こうした問題を未然に防ぐための排水対策として有効な手法を3つ、順を追って紹介していきます。




排水対策① 勾配の再設計で自然排水を確保

排水の基本中の基本、それが「勾配をつけること」です。勾配とは、地面にわずかな傾きを持たせて、水を自然に低い方へ流すための設計です。たった1〜2%の傾斜があるかないかで、水はけの良し悪しがまったく変わります。


本来、舗装工事の際にはこの勾配をしっかりと計算して設計・施工するのが前提ですが、経年劣化や沈下によって局所的にフラットな部分が生まれることがあります。その結果、排水口に届く前に水が溜まってしまうのです。


このような場合、部分的に舗装を剥がして再施工し、適切な勾配をつけ直すことで改善が見込めます。特にU字溝や集水桝の位置が既に決まっている駐車場では、そこに水が流れ込むような傾斜を意識して再設計することが重要です。


また、勾配をつける際に注意したいのは、「水はけ」と「安全性」のバランスです。傾斜が急すぎると、今度は車椅子やベビーカー利用者にとって不便になってしまうため、1%前後のなだらかな勾配を意識するのが基本です。


舗装面だけでなく、下地となる路盤にも適切な厚みと角度をもたせておくことで、長期的な沈下を防ぎやすくなります。小さな手直しに見えて、実は駐車場全体の機能を根本から支えるのが勾配設計です。




排水対策② 浸透性舗装で水を地中に逃がす仕組みとは

勾配による自然排水が難しい現場や、都市部のように排水設備の設置が制限される場所では、「浸透性舗装」という選択肢が有効です。これは、舗装そのものに水を通す性能を持たせ、雨水を地中に逃がすという考え方です。


代表的なものに「透水性アスファルト」や「インターロッキングブロック」があります。これらは表層材に小さな空隙(すきま)をもたせており、水が表面に溜まらず、そのまま地面にしみ込んでいく構造になっています。特に、ゲリラ豪雨のような短時間で大量の雨が降るケースにおいては、水はけの速さが大きな効果を発揮します。


浸透性舗装は、排水設備を新たに設ける必要がないため、スペースに限りがある現場や、景観を重視した設計でも活用しやすいのが特長です。また、舗装材によっては遮熱効果を持つものもあり、ヒートアイランド対策として公共施設や学校でも採用例が増えています。


ただし注意すべき点もあります。浸透性舗装は構造上、砂や泥がすきまに入り込みやすく、長期間使用すると目詰まりを起こすことがあります。定期的な清掃やメンテナンスを前提に設計しなければ、かえって排水性が低下してしまうリスクもあるのです。また、地盤が粘土質で水はけが悪い土地では、本来の効果を発揮しにくい場合があります。


このように、浸透性舗装は「適した環境で正しく使えば非常に効果的」な選択肢です。次のセクションでは、舗装材に依存せず、局所的に水を集めて処理する方法として注目されるU字溝・集水桝などの排水設備について見ていきます。

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排水対策③ 集水桝・U字溝で計画的に流す排水設計

浸透や傾斜だけでは処理しきれない雨水を確実に逃がす手段として、U字溝や集水桝などの「構造的排水設備」を活用する方法があります。これらは駐車場の排水計画のなかでも、最も確実で再現性の高い手法といえます。


まず、U字溝とは地面に沿って設置される開口型の側溝で、舗装面から流れた雨水を受けて、集中的に排水管へと導く役割を持ちます。車の出入りがある駐車場でも、フタ付きのU字溝であれば安全性を確保しつつ、メンテナンス性にも優れています。排水先をしっかり設計することで、舗装全体の水はけ性能が飛躍的に向上します。


また、集水桝は地面に点在して設置される「雨水の貯まり場」です。一見地味な存在ですが、周囲の勾配をうまく取れば、広い面積から効率よく水を集め、配管を通じて速やかに外部へ排出することができます。U字溝と比べて設置箇所の自由度が高く、局所的な低地や出入口付近などに適しています。


これらの排水設備は、単体で機能させるよりも、勾配設計や舗装材との組み合わせで「全体として流れを設計する」ことが求められます。また、落ち葉や土砂が溜まりやすいため、定期的な清掃・点検も必須です。設置して終わりではなく、「運用前提」で考えることが大切です。


構造物を組み込む排水対策は、初期費用こそかかるものの、最も安定した効果を得られる手段です。雨量が増え続ける昨今では、計画的な排水設備の導入が駐車場の資産価値を守る要になります。

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結論|排水は“施工後”に後悔しがち。設計段階での対策がカギ

駐車場の排水対策は、「完成してから問題に気づく」ことがとても多い分野です。水が溜まる、ひび割れる、機器が壊れる――そうした後悔の多くは、実は施工前の設計で防げたものばかりです。


勾配の確保、浸透性舗装の活用、排水設備の整備。どれも単独では万能ではありませんが、現場に合った組み合わせで導入すれば、大雨や老朽化にも耐えうる駐車場を実現することができます。


大切なのは、「今困っていないから大丈夫」と見過ごさないこと。見た目の小さな水たまりの裏には、大きな構造的な問題が潜んでいる場合もあります。将来の修繕費や安全性への影響を考えるなら、早い段階での見直しが最もコストを抑える手段です。


排水は地味なテーマに見えますが、駐車場全体の機能と寿命に直結する、本質的な課題です。少しでも気になる点があれば、信頼できる業者と一緒に、足元から見直してみてください。

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