駐車場でEV充電ビジネスを始めるには?設置前に知るべき舗装・基礎工事のポイント

「駐車場をただのスペースで終わらせない」そんな発想が広がる中で、EV(電気自動車)充電器の設置をビジネス化する動きが加速しています。特に注目されているのが、月極や商業施設、マンションの駐車場に充電器を設置し、時間単位や月額で課金するモデルです。


背景には、EVの普及を後押しする国の政策や、ガソリン価格の高騰といった社会的な要因があります。2020年代に入ってからは、各自治体が充電インフラに関する補助金を設ける例も増え、設備投資のハードルが下がってきました。「充電できる駐車場」は集客の武器になるだけでなく、使われていない土地を有効活用する手段としても注目されています。


また、単に充電設備を設置するだけでなく、アプリ連携や決済システムを導入して収益化を図る事例も増えています。ただし、こうした仕組みの前提には「土台としての駐車場の性能」が欠かせません。舗装の耐久性や、充電器の基礎を支える地盤が整っていなければ、トラブルのもとになってしまいます。


EVビジネスを始めるにあたっては、「電気設備」だけでなく「土木の視点」が必要になります。次のセクションでは、実際に充電器を設置するうえで確認しておきたいインフラの条件について整理していきます。




まず確認!EV充電器の設置に必要なインフラ条件とは

EV充電器を導入するときに真っ先に考えるべきなのが、「その場所に設置できる条件がそろっているか」という点です。とくに重要なのが、電気容量、配線ルート、地中障害物、そして防水性の4つです。これらが不十分だと、せっかく設置しても使えない、あるいはすぐに故障するといったトラブルにつながりかねません。


まずは電気容量。充電器は、想像以上に電力を消費します。特に急速充電タイプでは、家庭用の電気契約とは比べものにならない容量が必要です。既存の引き込み線で足りるか、別途高圧受電設備が必要か、事前に電気工事士や設備業者と相談する必要があります。


次に配線ルートの確保も見落とせません。建物の分電盤から駐車スペースまで、配管を通すスペースがあるかどうか、途中に構造物や障害物がないかをチェックします。地中埋設物(ガス管、水道管、通信ケーブルなど)が干渉する場合は、設計変更や追加工事が必要になることもあります。


さらに、設置場所の防水対策も必須です。屋外に設置する場合、コンセント部分や配線取り出し口が常に雨ざらしになるため、防水・防塵(ぼうじん)性能のある機器を選ぶことが基本になります。アスファルト舗装がひび割れていて水が溜まりやすい状態では、故障リスクが高くなるため、まずは舗装の健全性を確認すべきです。


これらの条件を事前に整理しておくことで、施工時のトラブルを大きく減らすことができます。次のセクションでは、こうした基礎条件が不十分な状態で設置を進めた結果、どのようなトラブルが起こりやすいのかを具体的に見ていきます。




舗装・基礎が弱いとどうなる?トラブル事例と対策

EV充電器は、機械の性能や設置方法ばかりが注目されがちですが、実際には「その下にある地面」がトラブルの原因になることが少なくありません。舗装や基礎が不安定なまま設置してしまうと、利用開始後にさまざまな問題が表面化します。


まず多いのが、舗装面の沈下やひび割れです。充電器はそれ自体に重量があるうえに、車両の乗り入れ時に振動が加わることで、設置部のアスファルトやコンクリートが徐々に沈み、傾いたり、クラックが生じるケースがあります。特に表層だけが薄く施工されていた場合や、下地の転圧が不十分だった場合に起こりやすく、補修も難しくなります。


また、ケーブルボックスや配管の設置箇所で水がたまり、ショートや漏電につながる例もあります。排水勾配が適切でなかったり、防水処理が不完全な場合、雨水が滞留し、機器の寿命を縮める原因となります。特に、配線が露出している構造だと、短期間で錆や腐食が進行することもあります。


さらに、充電器の基礎がしっかりしていない場合、強風や接触によって傾いたり、最悪の場合は倒れるリスクも否定できません。見た目にはわからなくても、アンカーの固定が不十分だったり、コンクリート基礎が浅かったりすると、長期的な安全性に不安が残ります。


こうしたトラブルは、機器の不良ではなく、地面づくりの甘さに起因していることが多いのが実情です。充電ビジネスの土台となるのは、「目に見えない基礎部分」であることを忘れてはいけません。次のセクションでは、充電器の種類に応じて最適な基礎工事がどう変わるかを整理していきます。




EV充電器の種類別、最適な基礎工事とは?

ひとくちに「EV充電器」といっても、出力や利用シーンによって求められる基礎工事は異なります。設置する前に、どのタイプの充電器を使うのかを明確にしたうえで、適した構造・施工方法を選ぶことが重要です。


まず、一般的な「普通充電器(3kW〜6kW)」の場合は、車両1台あたりの電力負荷が小さいため、比較的シンプルな基礎でも問題ないとされています。コンクリート製のボックスを使って地面としっかり固定し、雨水が侵入しないように防水処理を施すことが基本です。月極駐車場や集合住宅で導入が進んでいるタイプです。


次に、出力が高い「急速充電器(20kW〜50kW以上)」では、電力の安定供給だけでなく、耐震性・耐荷重性が求められます。そのため、地中に厚みのある独立基礎を打設する必要があり、地盤の強度調査や支持層までの深さ確認も行われるのが一般的です。設置費用も跳ね上がるため、商業施設や幹線道路沿いの充電ステーションで採用されています。


さらに、近年注目されている「V2H(Vehicle to Home)」や「双方向給電」タイプでは、屋内に近い環境が求められることもあり、床上設置の仕様になる場合もあります。その場合は、床面の水平性や配線導線がより複雑になります。


いずれのタイプでも共通して重要なのは、「基礎が長期間機器の重量を支えられる構造であるか」「将来的な機器交換にも対応できる設計になっているか」という視点です。今だけでなく、5年後・10年後も見据えた基礎づくりが、EV充電ビジネスを支える基盤になります。


次のセクションでは、こうした土木的な要素がどのように費用に影響するのかを整理し、予算計画の立て方について具体的に解説します。

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設置費用を左右する“土木”の要素とは?

EV充電器の設置には電気工事のイメージが強いですが、実際に費用を大きく左右するのは、むしろ舗装や基礎に関わる“土木”の要素です。ここを見落とすと、当初想定していた予算を大きくオーバーする可能性があります。


まず代表的なのが配管埋設工事です。電気ケーブルを通すための管を地中に埋め込むには、舗装の切削・掘削・埋戻しといった工程が必要です。既存の舗装がコンクリートであれば、アスファルトよりも施工費が高くなる傾向にあります。また、障害物の回避や深さの確保によって、手間とコストが変わります。


次に大きいのが基礎の構造です。前セクションでも触れたように、急速充電器や複数台設置を想定した場合は、基礎を厚くしたり、鉄筋を組んで強度を持たせる必要があります。これに加えて、アンカー固定の方法や、防錆・防水処理などの仕様によっても金額は変動します。


また、舗装の状態による追加工事も意外と盲点です。経年劣化している舗装の上に無理やり設置すると、沈下やひび割れの原因になります。そのため、事前に舗装の補修や勾配調整が必要になることもあり、こうした対応が見積もりに含まれているかを確認することが重要です。


加えて、排水設計や雨対策の有無も費用に直結します。U字溝や集水桝の設置、防水コンセントの選定など、細かい部分で追加工事が必要になることも珍しくありません。


これらを踏まえた上で、見積もりを取るときは「電気工事」だけでなく「土木・舗装工事」の内訳にも目を向けることが大切です。

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結論|EV充電器は“電気設備”+“土木設計”の両輪で考える

EV充電器の導入は、電気工事の領域に見えて、その実態は「土木」と「電気」の融合です。地面がしっかりしていなければ、どれほど高性能な機器を導入しても、トラブルの連鎖は避けられません。電気容量や配線ルートを確認するのと同じくらい、舗装の強度や基礎の構造にも気を配る必要があります。


短期的なコストだけで判断せず、長期的な運用と安全性を見据えて計画を立てることが、結果として最も効率の良い投資につながります。「電気」だけに目を奪われず、「足元」を見つめ直す――それがEV充電ビジネスを成功させるための第一歩です。


導入を検討している方は、まずは現場を見ながら、電気と土木の両方を理解している専門業者に相談するのが安心です。

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